最高裁判所第一小法廷 昭和48年(オ)188号 判決 1974年10月07日
主文
理由
第一審原告代理人岡田和義の上告理由および第一審被告代理人北村巌、同北村春江、同山本正澄、同古田伶子、同岩崎範夫の上告理由第一点について。
預金契約が預金等に係る不当契約の取締に関する法律二条一項に違反し、当事者が刑事上の制裁を受けることがあるとしても、右契約を私法上無効のものと解することは相当でなく(最高裁昭和四四年(オ)第九八〇号同四九年三月一日第二小法廷判決・裁判所時報六三七号四頁、最高裁昭和四七年(オ)第五二六号同四九年三月二八日第一小法廷判決参照)、原審の確定した事実関係を勘案してみても、いまだ本件預金契約が公序良俗に反し無効のものと認めることはできない。
したがつて、本件預金契約を公序良俗違反により無効であるとして、第一審原告の預金払戻および附帯の請求を認容した第一審判決を取り消したうえ、該請求を棄却し、かつ、預金契約の無効を前提として、予備的請求たる第一審原告の不当利得返還および附帯請求の一部を認容すべきものとした原判決には、法令解釈の誤りがあり、その違法は原判決の結論に影響を与えるとこが明らかであるから、本件において右予備的請求がされているとみるべきか否かの点について判断を示すまでもなく、原判決は破棄を免れない。そして、原審の適法に確定した事実関係に照らせば、第一審原告の預金払戻および附帯請求を認容した第一審判決は相当であつて、第一審被告の控訴は理由がないから、これを棄却
(裁判長裁判官 下田武三 裁判官 大隅健一郎 裁判官 藤林益三 裁判官 岸 盛一 裁判官 岸上康夫)